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  • 執筆者の写真TENTEKO

アートのビジネスマン/ラリー・ガゴシアンという男

更新日:2018年8月30日



前回、プライマリー市場には、発見者である中小ギャラリーと売れっ子を抱える大手ギャラリーがあるということをお話しました。今回は大手ギャラリーについてお話します。


ラリー・ガゴシアンは後者の人物です。彼は、世界にいくつものギャラリーを抱える大手のやり手ギャラリストです。彼のギャラリーでは売れっ子のアーティストしか扱いません。

ガゴシアンは、話しているときも相手の顔をじっと見つめ、笑ったりもしないようです。彼のギャラリーはシステム化され、従業員は売上目標を達成しなければならなかったり、顧客は購入1時間以内に支払いを済ませなければならなかったりします。

イギリスの大手コレクター、チャールズ・サーチでさえガゴシアンは怖い感じがするようです。


ガゴシアンは、アートと金の関係性に早くから気づき、成功をおさめました。億万長者というターゲットにしぼり戦略的にビジネスを展開していったのです。

前回お話した、アーティストの発見者である中小ギャラリーとは異なり、ガゴシアンの場合は他のギャラリーからアーティストの引き抜きを行なったりもします。そして、独占販売権を取り付けるのです、、

大規模な競売には必ず現れ、買い手がいないときをねらって介入します。そして自分が気に入ったアーティストの評価を、メディア戦略などを徹底的に行い、何が何でも維持します。



また、大手ギャラリーのギャラリストでもう一人、チャールズ・サーチなどは、一度気に入ると最大限購入し、興味がなくなったら転売する、ということがあり、アートのビジネスマンたちによって、値段が急上昇したり、暴落することもあるのです。





《重要人物》

●ラリー・ガゴシアン: 世界に10以上ものギャラリーをもつ、やり手ギャラリスト。

●チャールズ・サーチ: イギリスのコレクター。広告代理店で働いた過去を持ち、宣伝のプロ。

●サラ・ダグラス: アメリカ月刊誌『アート+オークション』の記者。

●ナーマド三兄弟:ギャラリストでコレクター。

●フィリップ・セガロ:アート・アドバイザー。


《キーワード》

●アニッシュ・カプーア: インドのアーティスト。

●アンソニー・カロ: イギリスの彫刻家。

●ユエ・ミンジュン:中国の画家。シニカル・リアリズム運動の一員。

●シニカル・リアリズム

●サンドロ・キア:イタリアのアーティスト。サーチに気に入られて転売された一人。

●ウェイティング・リスト:コレクターたちが登録するギャラリーの購入予約リスト。

●ピュリー社:大手競売会社。

●グッゲンハイム美術館


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