前回、プライマリー市場には、発見者である中小ギャラリーと売れっ子を抱える大手ギャラリーがあるということをお話しました。今回は大手ギャラリーについてお話します。
ラリー・ガゴシアンは後者の人物です。彼は、世界にいくつものギャラリーを抱える大手のやり手ギャラリストです。彼のギャラリーでは売れっ子のアーティストしか扱いません。
ガゴシアンは、話しているときも相手の顔をじっと見つめ、笑ったりもしないようです。彼のギャラリーはシステム化され、従業員は売上目標を達成しなければならなかったり、顧客は購入1時間以内に支払いを済ませなければならなかったりします。
イギリスの大手コレクター、チャールズ・サーチでさえガゴシアンは怖い感じがするようです。
ガゴシアンは、アートと金の関係性に早くから気づき、成功をおさめました。億万長者というターゲットにしぼり戦略的にビジネスを展開していったのです。
前回お話した、アーティストの発見者である中小ギャラリーとは異なり、ガゴシアンの場合は他のギャラリーからアーティストの引き抜きを行なったりもします。そして、独占販売権を取り付けるのです、、
大規模な競売には必ず現れ、買い手がいないときをねらって介入します。そして自分が気に入ったアーティストの評価を、メディア戦略などを徹底的に行い、何が何でも維持します。
また、大手ギャラリーのギャラリストでもう一人、チャールズ・サーチなどは、一度気に入ると最大限購入し、興味がなくなったら転売する、ということがあり、アートのビジネスマンたちによって、値段が急上昇したり、暴落することもあるのです。
《重要人物》
●ラリー・ガゴシアン: 世界に10以上ものギャラリーをもつ、やり手ギャラリスト。
●チャールズ・サーチ: イギリスのコレクター。広告代理店で働いた過去を持ち、宣伝のプロ。
●サラ・ダグラス: アメリカ月刊誌『アート+オークション』の記者。
●ナーマド三兄弟:ギャラリストでコレクター。
●フィリップ・セガロ:アート・アドバイザー。
《キーワード》
●アニッシュ・カプーア: インドのアーティスト。
●アンソニー・カロ: イギリスの彫刻家。
●ユエ・ミンジュン:中国の画家。シニカル・リアリズム運動の一員。
●シニカル・リアリズム
●サンドロ・キア:イタリアのアーティスト。サーチに気に入られて転売された一人。
●ウェイティング・リスト:コレクターたちが登録するギャラリーの購入予約リスト。
●ピュリー社:大手競売会社。
●グッゲンハイム美術館