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  • 執筆者の写真TENTEKO

ナーマド一族



ギャラリストのピエール・ユベールは自由港をつくり、そこに作品をストックしています。ギャラリーに保管すると税金を払わなければならないのですが、自由港では税関手続きを留保しておけるため際限なくストックすることができるそうです。自由港にある作品は、コレクターの手に渡るときに、コレクター自身が支払うようになっています。

彼いわく、「アートの売買は銀行と同じように、目立ってはいけない仕事」なんだそうです。



本著者は、画商やギャラリストの仕事の秘訣は、「うまく買うこと」と述べています。上手なギャラリストは、アーティストの初期もしくは共に仕事を始めた時期に、作品を大量に買います。そして一部を売りに出し、その他は値が上がったときに売るのです。



本日は、あまり表に出ない大画商一族、ナーマド一族について紹介します。



ナーマド一族はアート界の面子からは恐れられていて、狙いを定めた作品は必ず手に入れます。世界的な競売には、必ず一族のだれかが顔を出します。また基本、彼らは取材には応じないか、弁護士軍団を同席させて応じるようです。三男のデイヴィッドいわく、今の市場は買い手の方が多く、買い手は金を惜しまない傾向にあるようです。だからこそ、手元に存在感を示す作品を手元に残しておくことも大切だといいます。




ナーマド3兄弟は、銀行家の息子で、実業家です。彼らのアートの必勝法は、以下です。


①買って保管し、市場が高騰したら売る

②外国為替により資産を増やす

③客を呼び寄せること




ナーマド一族は基本的にクラシックな作家(すでに名のある)に限ります。なぜならば、評価が定まっているからです。現代のアーティストは投機的な要素がある分、評価がはっきりしないからです。つまり、稀少性が勝ちなのです。






〈重要人物〉

*ピエール・ユベール:ジュネーヴのギャラリスト。ギャラリー「アート&パブリック」を経営。

*ピエール・ナオン:ギャラリスト。

*デイヴィッド・ナーマド:ナーマド3兄弟の三男。

*ヴェルナー・シュピース:パリのポンピドゥー・センター国立近代美術館の元館長。


〈キーワード〉

*ヘリー・ナーマド・ギャラリー:ロンドンの、ナーマド一族のギャラリー。

*ルチオ・フォンタナ:アーティスト。

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