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  • 執筆者の写真TENTEKO

キュビスム #1: 3つのキュビスム



アートタイムです。 『20世紀の美術』(美術出版社)を主に参考にしながら、近代以降の各ジャンルごとにまとめるページです。 各アーティストについては、ARTISTのカテゴリでまとめていきます。新たに知ったことがあればどんどん追記していきます。




第一次世界大戦前には、2つの芸術運動がありました。


キュビスムと未来派です。


キュビスムは、ルネサンス以降のリアリズムを批判し、現実の対象や空間に対する視覚と認識の仕方を問い直そうとしました。 未来派は、近代社会の変化と機械産業の活性化、特に自動車や飛行機の速度が時間と空間を縮小していくダイナミズムに注目しました。

どちらも現実の分析=総合という方法によって新しい創造の可能性を探りました。



今回は、キュビスムについて勉強します。 キュビスムの考え方は、現実を複数視点から眺め、同時的に合成した図像として構成しようとするものです。

キュビスムは大きく3つの時代に分けることができます。 ●セザンヌ的キュビスム ●分析的キュビスム ●総合的キュビスム



中心人物は、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックです。




《セザンヌ的キュビスム》1908~1909年 1908年、ブラック初の個展について、批評家ヴォ―クセルが「彼は形体を軽視し、すべてを幾何学的な図式や立方体に還元する」と批判したことで、キュビスムと名付けられました。1909年の『メルキュール・ド・フランス』誌に載ったシャルル・モリスの展覧会批評が初出となります。

この時期、ブラックはフォーヴィスムの色彩表現に熱中し、セザンヌ的な形体の単純化、高い視点からの構図を試みていました。また、ピカソに出会い、[アヴィニョンの娘たち]や[3人の女]に衝撃を受けたそうです。


*作品 ●[アヴィニョンの娘たち]/ピカソ ●[3人の女]/ピカソ ●[レスタックの家々]/ブラック





《分析的キュビスム》1909~1912年 ピカソとブラックは、 対象をあらゆる角度から把握することと、 見た通りにではなく考えたように構成することを目指していました。

この時期の作品の特徴は、 モチーフとその背景が無数の線と単色の明暗によって分析・細分化されていることです。 色彩が地味なのは、感覚的な愉悦を遠ざけ、形体の分析と2次元平面への構造化に集中するためであると、著書にはあります。


*作品 ●[ヴァイオリンの水差し]/ブラック ●[ダニエル=ヘンリー・カーンワイラーのの肖像]/ピカソ





《総合的キュビスム》1912~1916年 分析した要素を再統合する総合的な表現や、大きな面の集合が表れ始めます。ピカソの[ヴァイオリン]のように、楕円の支持体の作品などが登場します。隅のない楕円は主題の集中化を助け、より緊密な構造をつくりだす狙いがあります。

また、この時期には紙を貼るパピエ・コレや、紙以外のものを貼るコラージュ作品にも挑戦します。

分析的キュビスムのときには色彩は地味でしたが、1914年には図形化が進み画面が平板になり、豊かな色彩と陽気な装飾性が表れるようになりました。 しかし、同年8月に第一次世界大戦が勃発し、二人の共同実験によるキュビスムは終わりを告げました。ブラックは兵士として戦争へ赴き無事帰還しましたが、キュビスムが復活することはありませんでした。ピカソは新古典主義の様式に転じました。

二人の思考法と表現法は、 彫刻・建築・デザイン・文学にも影響を与えました。 さらに多面的な視覚による総合化、分析と再構築、断片化と寄せ集め、引用とコピー、記号と図式、概念による知的ゲーム、生活の素材や環境的イメージ、マス・メディアのイメージといった今日の文化的特徴を予告することになりました。


*作品 ●[ヴァイオリン]/ピカソ(コラージュ) ●[籐椅子のある静物]/ピカソ ●[若い娘の肖像]/ピカソ・・・ロココ的キュビスムとも呼ばれる。




また、第3のキュビストにファン・グリスがいます。 色彩と正確な輪郭線をもつ数種の平面を抽象的な構成で組み立て、具体的イメージを融合させる作品を制作します。理論家でもあり、ディエゴ・リベラをはじめ、多くの追随者にキュビスムの原理を伝え、影響を与えました。リベラは、のちにメキシコ壁画運動の巨匠となります。

また、フェルナン・レジェも独自のキュビスムの創始者と言われています。彼はセザンヌの影響を強く受けています。形体と色彩の対比を原理とする作品が特徴です。


*作品 ●[朝食]/ファン・グリス ●[静物]/ディエゴ・リベラ ●[森の中の裸像]/フェルナン・レジェ ●[煙草を喫う人]/フェルナン・レジェ



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